学術大会運営 失敗しないパートナー選定ステップガイド 1/4(全4回)
2023.06.04
2024.07.31
学会や学術会議の開催をDX化するために、いろいろなアプローチが進められています。DX(Digital Transformation)の推進は単に学会運営業務にデジタルを取り入れることを目標としている訳ではありません。デジタル化は手段であり、新しい仕組みを学会運営に提供し、学会そのものの価値を上げることがDXの目的です。
そのためには、効率化と新しい価値を作るに適切な協力者やパートナーの支援は欠かせないでしょう。パートナーに求められるものは、技術力だけではありません。どのような要件があり、特徴を備えていることが望ましいのかを考えます。実際のソリューション提供をしている国内の企業や団体の整理も行ないましたので参考にしてください。
1.学会開催支援パートナーの必要性
学会の開催には、多くの準備と運営業務が伴います。
例えば、会場の手配、プログラムの作成、参加者の登録や受付、資料の作成と配布、さらには報告書のまとめなど、時間と労力を要する作業が数多くあります。これらの業務を主催者だけで行うことは非常に大変で、負担や時間が増えるばかりです。協力者が存在することで、主催者は専門知識と実績のあるサポートを受けられます。パートナー企業は、効率的な大会の準備や運営をサポートし、主催者の負荷を軽減します。
また、経験の豊富さは柔軟かつ迅速な対応が期待できます。トラブルや問題が発生した際にも適切な解決策の提案を受けられるでしょう。外部リソース(サービス・人材)を導入する場合も、学会の規模や学術会議の開催方法による適切なスケール感のアドバイスも受けられます。信頼できる企業や団体とのパートナーシップは不可欠です。適切な選定は、スムーズな運営と満足度の高い学会を実現するために重要な要素です。
学会開催支援パートナーが提供するソリューションの特徴を評価しましょう。経験や専門知識、サービスの幅広さなど、学会運営のあらゆる側面に対応できる能力が求められます。
特に、会場手配と設営、プログラム企画、参加者管理、資料作成・印刷、イベント運営サポートなどの領域において、十分な経験と実績を持っているかを確認するのが良策です。
次に、信頼性と柔軟性を評価してください。学会の準備においては、緻密な計画とタイムリーな対応が求められます。選定パートナーが約束を守り、スケジュール通りに進められることは非常に重要です。
また、突発的な変更や要望にも柔軟に対応できるかどうかも確認してください。
さらに、コミュニケーション能力と協力度も重要な要素です。
学会準備は多くの関係者との連携が必要となるため、スムーズなコミュニケーションと円滑な協力関係が築けるかどうかはポイントです。教員や事務局との連携が円滑に行えるパートナーであるかどうかを確かめることを忘れないでください。
国際会議や海外からの講演者を招く時には、外国語やビーガン、ハラールなどの海外文化についても精通している必要があります。
2.提供ソリューションの特徴
学会大会の開催、運営支援の外部リソースの有効活用パターンは大きく分けると4つあります。
「総合システム」型「システム+支援」型「個別ツール」型「学会事務局支援」型の4つです。それぞれの特徴について別解説ページを用意致しました。
2.1. 「総合システム」型
国内には7社ほどあります。学会開催のシステムを提供しているパターンです。システム開発会社が事務局を支援します。
Webベースで個別機能を統合して管理画面から事務局の必要とする設定が行えるのが魅力的です。
詳しくは下記ページをにて解説致しました。
2.2.「システム+支援」型
上記のパターンに人材リソースも提供するものです。システム開発も行い、サポート人員も抱えているパターンです。システムの機能の不足面も人海戦術で乗り切れるので、柔軟に対応できる特徴があります。国内に14社あり、システム利用料に人件費がプラスされるので、コスト的にはどうしても上がってしまいます。
詳しくは下記ページをにて解説致しました。
2.3.「個別ツール」型
決済システムなど、事務局業務の一部に個別システムを導入するパターンです。他にも参加者登録システムやオンラインライブ配信システムなどを別箇に導入したり、参加者に後日アンケートをお願いしたりするシステムもあります。
2.4.「学会事務局支援」型
この形態が一番多くて149社あり、それぞれ母体となる事業によって得意分野が異なります。
印刷会社の場合は、学会誌や予稿集の印刷・出版に長けています。学会参加者の宿泊先や移動手段の手配まで行えるのは、旅行会社や旅行代理店です。
また、それぞれの会社が協力して役割分担をしながら学会事務局を支援するパターンもあります。
詳しくは下記ページをにて解説致しました。
3.国内学会開催支援主要パートナー
さて、何事も多くの情報収集が鍵です。ただし、余り多すぎる情報はかえって混乱を招く要因になってしまいます。
そこで提供ソリューション別に主要パートナーのリストを整理しました。
学会の事務局のいろいろな仕事やシステム構築の相談にのってくれる会社や団体です。
4つのパターンに分けて一覧表にしています。直接会って打ち合わせを希望する場合には、学会事務局の所在地からの距離も大切な要素となるでしょう。
支援範囲と提供ソリューションを備考欄に整理しています。提供ソリューションは「学会開催」「会員管理」「演題登録」「Webサイト構築」「開発」「オンライン開催」「宿泊」「印刷」「イベント業務」「翻訳」「出版」「学術資料の電子化」などに分類しています。
それぞれのサイトのURLも掲載しておりますので、さらに詳しい情報を知りたい時の参考にしてください。
学会支援事業社 全国200社リスト
3.2.タスクの再配分
学生や若手研究者に大会準備の「仕事を振る」(仕事の再配分)ことも大切です。大学や高等教育機関の教員の大切な仕事の一つに、教育があります。文献からも、インターネットからも決して学ぶことの出来ない経験を後人に与えることも教育の一環です。
おわりに
それぞれ支援パートナーには得手不得手があり、得意分野が変わります。学会支援を専業とする会社と総合システム型のように他のシステム開発も行っている会社ではコスト感もちがってきます。
傾向として専業の場合には高く、他に収益源がある場合には低くコストが抑えられているようです。
支援パートナーの選定にあたっては、事務局の負担が少ないのは、ワンストップサービスが受けられる「システム+支援」型です。ただし、マンパワーも含まれる関係上コスト高につながります。学会運営費用が潤沢に確保できる学会向けです。
次に、事務局にシステム構築やプロジェクトマネジメントに知見のあるメンバーがいる場合には「個別ツール」型が最もコストを抑えられます。人員についても、学生や大学院生の協力が得られる場合には人件費も抑えられます。
さいごに、「総合システム」型の選定は、多くの学会の規模に柔軟に対応できる万能型です。
この場合には、まずその会社の提供システムが所属学会に向いているかどうか、機能面で評価します。足りないタスクについて、「学会事務局支援」型の会社から必要部分のみを相談に乗ってもらうようにします。
例えば、予稿集の印刷や学術会議後の論文集などの製作です。国際学術講演会がある場合には、翻訳会社や通訳エージェントなどに依頼します。
学会の大会開催や学術会議の成功に向けて学会事務局は多くの業務をこなさなければなりません。
学会開催支援のパートナーは数多くあります。適切なパートナー選びは、大会成功の一歩と言えるでしょう。