学会運営に税金はかかる?

2024.06.16

2024.07.31

学会は、条件を満たす場合様々な税金がかかることがあります。

この記事では、そんな学会と税金について解説していきます。

学会の税金問題

学会が税金の問題に直面することは、珍しくありません。

法人税法によると、収益事業を行う学会は申告及び納税の義務があります。

これは、法人格を持たない人格なき社団でも同様です。

経理体制が整っていれば税務問題はあまり発生しませんが、経理が不十分な場合本来控除できる経費が控除されず、学会に不利益をもたらす可能性があります。

脱税が発覚すると、税務署から追徴課税を請求される場合があり、学会の信用に傷がつくこともあります。

課される主な税金

学会に課される主な税金はどのようなものがあるのでしょう。

ここからは、学会に課される主な税金について解説していきます。

法人税

学会が収益事業を行う場合、法人税が課されることがあるため十分に注意しなくてはなりません。

法人税は利益にかかる税金ですが、非営利団体である学会では収入以上に支出が多く、適切に経理書類を作成すれば税額が発生しない場合もあります。

しかし、経理書類が整っていないと課税されるリスクが高まります。

そのため、信頼できる会計ソフトの導入や専門家のアドバイスを受け、経理体制を整えることが重要です。

学会が収益事業を行うとみなされる例は、下記のとおりです。

・非会員への会誌販売

・会誌への広告掲載やHPのバナー広告

・学会大会での企業ブース出店料

・非会員等の大会後の懇親会参加費

・出版社からの書籍販売印税

これらの活動が収益事業に該当する場合、申告および納税の義務が生じるため、注意が必要です。

納税がされていないと脱法行為とみなされ、後に発覚すると税務署から追徴課税を請求されることがあります。

これは額が少額でも学会としては不名誉であり、会長や理事長に余計な負担がかかる可能性があるでしょう。

消費税

消費税は、国内で行われる対価性のある取引に対して課されます。

消費税の申告義務があるかどうかは、2事業年度前の課税売上高が1000万円を超えるかどうかで判定され、前年の上半期の課税売上および人件費が1000万円を超える場合や、自ら課税事業者を選択した場合にも申告義務が生じます。

また、消費税の申告義務と法人税の申告義務は連動しないため注意が必要です。

法人全体が赤字でも、消費税の納税義務が発生する場合があります。

学会で課税取引に該当する収入例は下記のとおりです。

・研修会や学術集会の参加料収入

・展示料収入

・抄録集の販売収入

・広告収入、会報の有償頒布

・ロイヤリティ収入

・専門書籍の出版収入

・認定資格制度の収入

・研究請負の収入

入会金や会費収入は一般的に課税取引に該当しませんが、事業の対価としての性格を有する場合は課税取引となります。

消費税の申告義務の有無や計算方法は、法人や団体の種類にかかわらず過去の課税売上高の大きさで判断されます。

法人住民税

法人住民税は、法人が所在する限り納付が必要な税金で、利益や売上に関係なく発生するため注意が必要です。

法人税や消費税に税額が生じない場合でも、法人住民税は必ず発生します。

自治体によって異なりますが、年間7万円程度が一般的です。

法人格の有無に関わらず、学会が法人住民税を納めていないと常に脱法状態となる可能性があります。

このため、学会は法人住民税の納付義務を調査し、確実に行う必要があるでしょう。

源泉税

源泉徴収制度は、法人や団体が給与や謝礼を支払う際に所得税の一部を事前に差し引いて国に納付する制度です。

支払いの翌月10日までに納付する必要があります。

小規模の法人や団体は、給与の源泉納付を年2回にする特例もあります。

学会で源泉徴収が必要となるひとつの例としては、講師や原稿執筆者への謝礼です。

たとえば、手取額150,000円の謝礼を支払う場合、源泉税率は10.21%ですので以下のように計算します。

150,000円 ÷ (1 – 10.21%) = 167,073円
167,073円 × 10.21% = 17,073円

この場合、支払う謝礼の総額は167,073円となり、源泉税17,073円を差し引いた150,000円を本人に支払い、17,073円を源泉税として翌月10日までに国に納付しなければなりません。

報酬が商品券で支払われる場合も、同様に計算して源泉税を納付する必要があります。

学会が税務申告を行なっていないケース

学会において、以下の理由から税務申告を行っていないケースが見られます。

・いままでに一度も税務申告をしておらず、税務調査や税務署からの問い合わせもない。

・源泉所得税の納付は行っているが、他の税務申告は行っていない。

・他の類似の学術団体が税務申告していない。

・公益的な事業活動のみを実施している。

・公益法人または任意団体である。

・決算が赤字である。

・学術総会の収入は多いが、学会本体とは別の決算であり収益事業を行っていない。

これらの理由はいずれも税務申告を免除される理由にはなりません。

法人税と消費税の申告義務は、個々の事業内容や事業規模に基づき、個別具体的に検討する必要があります。

まとめ

学会運営において、税金の問題はしっかりと検討する必要があります。

払うべき税金は、しっかりと洗い出し申告するようにしましょう。

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