米国AI学会によるチャットボットでの論文を生成制限

2023.03.20

2024.07.31

ここ最近リリースされて話題となっているChatGPTはとても高度な言語能力を持っており、大きな可能性を持っているAIです。このChatGPTは、あまりに高度なためアメリカのAI学会にて論文生成に利用することを禁止しました。この記事では、規制されたChatGPTとは何か、他の規制などについて詳しく解説していきます。

ChatGPTとは

ChatGPTとは、OpenAIというアメリカのAI研究所が開発をしたチャットボットです。ちなみにGPTというのは、「Generative Pretrained Transformer(ジェネレーティブ・プリ・トレーニド・トランスフォーマー)」の略です。要するに大量のテキストデータから言語学習を行い、人間にかなり近い自然な文章を作ることができるチャットボットと言えるでしょう。

このChatGPTは、2022年の11月にリリースされ翌年の2月までには約1億人を超えるユーザーが利用を開始しています。これはかなり驚異的なスピードであり、今までのネットサービスを遥かに超えるスピードで広がっています。

様々な言語に対応しており、日本語でも使えますし情報の引き出しが膨大かつ人間に近い文章を作り出せるため今後更なる利用者の増加と発展が進んでいくことでしょう。

ちなみに、Googleの検索エンジンとの比較がよく上がりますがChatGPTは検索エンジンとは全く違います。Googleの検索エンジンは検索キーワードに対して最も最適な情報を得られる記事を探してくれるものです。それに対してChatGPTは、キーワードを打ち込むとチャットGPT自体がそのキーワードについて教えてくれるものです。

AI学会の規制

機械学習の学会であるInternational Conference on Machine Learning(ICML)は、2023年の1月に高度なAIやチャットボットを利用して論文を作成することを禁止しました。

AIの研究を促進させる機関が、研究目的での実験を除いてChatGPTなどを利用して論文を作成することを禁止したという事実は研究者の間でも大きな議論を生んでいます。

規制の背景

ChatGPTなどの登場やより高度な精度のチャットボットが登場したことにより、高機能AIが研究者に代わって論文が作成できるようになりました。

こういった高機能なAIの登場を理由として、ICMLは論文全体をChatGPTなどのチャットボットで作成することを禁止するに至っています。

一方で、多くの研究者は書き上げた論文を編集するためにChatGPTを使っていますがこの使い方は容認をしているようです。英語を母国語としていない研究者は、ChatGPTを使いスペルや文法をチェックし改善していきますがこれは禁止されていません。

ChatGPTを使うことに対する議論

ICMLの規制に対しては、意見がかなり分かれています。ICMLは、ChatGPTで論文を禁止していますが高度なAIを利用すること自体は禁止すべきではないと意見は少なくありません。

ChatGPTは人間の言語能力に近いため、これを使ってつ食った文章の部分は注釈などでわかるようにしておくといった案が示されています。

研究者の間でも利用方法の試験が始まっており、ChatGPTを論文の執筆者として記載する方式の論文も登場しています。

しかし、ChatGPTは人間ではなくAIです。そのためこの方式には違和感を感じる人も少なくないため今後も議論が必要となってくるでしょう。

教育機関によるChatGPTの規制

ニューヨーク市では、学校内のシステムやネットワーク内でChatGPTを利用すること自体を禁止しています。ChatGPTをニューヨーク市が禁止した理由は、生徒に対して学校教育をしていく上でチャットボットが生徒の学習能力に悪影響を与えてしまうからと考えたからです。

なぜ悪影響なのでしょうか。ChatGPTは、『AIが作り出す世界の未来』などといった論文テーマを入力すると自動で論文の文面を作ってくれるからです。自動で論文を作ってくれるので、生徒達は苦労して論文を作るということをしなくなってしまいます。

また、まだまだChatGPTは発展途上なためあまり良くない表現や全くの嘘を回答することが少なくありません。

ニューヨーク市はアメリカで最大の学校システムであり、この決定は他の地域の学校にも大きな影響を与えることが予想され、アメリカ全体の教育機関でもChatGPTについての議論が始まっています。

また、実際に教育現場でChatGPTを利用してみたカルフォルニア州バークレー市の高校教師はChatGPTの性能の高さに驚きを隠せなかったそうです。

宿題で論文のテーマが示され生徒はそれに沿って文章を書いていくというのが通常ですが、このテーマをChatGPTに入力すると生徒が作成する論文の品質を上回るどころか平均的な教師の技能を上回ってくる文章を作ることができます。

こう言ったことからChatGPTの登場は、現場の教師からも学校教育が機能しなくなると恐れられています。