日本の女性研究者は少ない?日本が抱える課題とは?

2023.11.22

2024.07.31

日本では、国会議員や企業役員など様々な組織で他の先進国よりも女性が少ないとされています。研究者もその中のひとつであり日本の課題です。この記事では、そんな女性研究者が少ない理由について深掘りしていきます。

女性研究者の割合は?

日本の学術研究者のうち女性研究者の割合は17.5%です。(総務省『科学技術研究調査』2021より)

この割合は近年緩やかに上昇傾向ではありますが、イギリスやアメリカなどのいわゆる先進国と比べてしまうと明らかに低い数値になっているのが実情です。

日本の学術研究者の中で女性の割合が少ない背景として、大学院へ進学する女性が少ないという実態があります。

文部科学省の調査によると大学生の女性比率が45.6%になるのに対して大学院生の比率になると32.7%まで減少してしまいます。(「2021年度学校基本調査」)

こういった背景も女性比が少なくなっている要因のようです。

女性研究者が少ない具体的な理由

東京新聞が実際に理系の女性研究者203名へアンケートを行った結果では、実に73%もの人が『家庭(家事・育児・介護)との両立が困難』と回答していました。

理系の学術研究者は特に不安定な任期付きの雇用体系が多く、女性研究者であれば出産や育児で研究を中断せざるを得なくなり大きな不利益を受けているという実情が見えてきます。

また、任期中に出産へ時間を充ててしまうと次のポストが見つかりにくかったり、そもそも育休の条件に当てはまらず取得することができないなど家庭と研究者を両立するのが困難であるという声も上がっていました。

さらには、2番目に回答の多かった無意識の偏見も女性研究者の割合が少ない大きな原因のひとつになっているようです。

例えば、子供の頃から女性は数学や理科など理系分野が苦手、理系分野はあまり勉強しなくても大丈夫などの周りの風潮が特に女性による理系の志望者数を減らしています。

このように、家庭との両立や女性が理系に向いていないという根拠のない偏見によって日本では学術研究者を志す女性の割合が少なくなっている実態があるようです。

任期付き雇用も原因に

日本政府が掲げている科学技術立国の裏で、多くの若手研究者が任期付きの雇用という不安定な立場に置かれています。

その中でも女性に関しては、家庭に入るか学術研究者としての道を歩むのかという選択を強いられ、学術研究者としての道を諦めざるを得ない人も少なくありません。

文部科学省の調査によると2009年時点での40代未満の国立大学教員のうち任期付きの職員は49%でしたが、2019年は66%と大幅に上昇しています。

特に自然科学系の大学研究者に着目してみると、なんと女性研究者は73%もの人が任期付きの雇用となっていました。

この背景には、特定の研究計画に対して期限を設定し投資を行う『選択と集中』の方針があるためその期間と資金に合わせて学術研究者を募集するという実態があります。

育児休業中に任期が切れてしまい、無職になってしまえば保育園に子供を預けることも出来なくなり復職も難しくなってしまいます。

このような学術研究者に多い特殊な雇用形態に子育ての制度が追いついておらず、対応ができていないがために子供ができたときに研究者としての道を諦めてしまうことも多いようです。

本当に女性は理系に向いていないのか

前述もしましたが、女性研究者が少ない理由に女性は理系に向いていないという偏見があるからというものがありました。

昔からこのように言われてしまっているため、無意識的になんとなく苦手ということで理系の学部を進学の選択肢に入れていないということもあるようです。

現代では、特に様々な人から様々なアイデアを絞り出すことが必要になります。

このような偏見や刷り込みをどのように改善していくかも女性研究者の割合を増やすポイントです。

国による取り組み

日本においても、女性研究者が少ないというのは課題であり様々な取り組みが行われています。

文部科学省においては、研究と出産・育児等の女性がかなりの負担を要するライフイベントとの両立や女性研究者の研究力向上を目的としたリーダーの育成を推進する大学の取り組みを支援する『ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ事業』を実施しています。

また、内閣府子ども・子育て本部や文部科学省、経済産業省、厚生労働省の各省庁が子育て中の女性研究者が抱える悩みや多様なニーズに応えるべく学内保育施設やサポート体制の充実を促進しているそうです。

さらには、独立行政法人日本学術振興会の取り組みとして博士の学位取得者のなかで特に優れている女性研究者が出産・育児などのライフイベントによって研究を中断してしまった場合、スムーズな研究の現場復帰を実現し問題なく大学等の研究機関で学術研究に専念することで研究者としての能力を向上できるよう「特別研究員(RPD)事業」という支援が行われています。

まとめ

女性研究者が少ないというのは、国や地域全体で取り組んでいかなければ解決ができません。

官民一体となり、取り組んでいかなければならない課題と言えるでしょう。

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