研究倫理とは?
2023.06.20
2024.07.31
学術研究の不正行為や誠実でない学術研究活動は社会と学術研究との信頼を失い、ひいては科学技術や医療技術の発展までも阻害してしまう可能性があります。この記事では、公正な学術研究を促進するためにある研究倫理について解説していきます。
研究倫理とは
研究倫理とは、学術研究を行う上で遵守しなければならない学術研究活動上の倫理的原則です。
学術研究活動は、その内容が文系か理系かに関わらず人間社会にとって大きな影響を及ぼす可能性があります。
不正な手段によって得られた研究結果や公平さ公共性を著しく欠いた学術研究、人権を大きく無視した学術研究は社会に悪影響を及ぼし、正当な学術研究の信頼性も低下させてしまいます。
学術研究とは、ただ単に学位を取得したり利益を貪るための行為ではありません。その目的は、地球社会の価値増進に貢献しているということ強く考え、研究倫理を遵守することは学術研究に携わる研究者としての社会的責任だと自覚することが重要です。
研究倫理に反していると考えられる行為は?
研究倫理に反する行為とは、大きく分けると下記の3つに分けられます。
1.人権に反する行為
2.不正な手段を用いた学術研究
3.不正な研究費使用
1つずつ詳しく解説していきます。
人権に反する行為
学術研究者は、学術研究の過程や研究結果の発表が人権を侵害することのないようにしなければなりません。人権以外にも、ジェンダーや思想・信条、地位や宗教、国籍や人種などに関連する差別が学術研究の過程で発生しないようにしなくてはいけません。
また、研究成果の内容についても差別を含むようなものがあってはいけないとされています。
さらには、個人情報の取り扱いについても十分な注意が必要です。特に文系の学術研究においては、学術研究の中で特定の人達の個人情報を取得することが少なくありません。個人の権利や利益を侵すような個人情報の漏洩は気をつけるべき項目です。
なお論文執筆の時、個人情報に関わってくるアンケートや調査を行いたい場合は研究計画の倫理審査を経なくてはならない場合があるため注意が必要となります。
不正な手段を用いた学術研究
学会発表や論文作成は、正当な手段と正当な手続きを通じて行われなくてはいけません。不正な手段を用いて行われた研究結果の発表は学術研究の世界では犯罪を犯したと等しいものと見なされ、厳しく弾糾されます。
不正な手段とは、『捏造』『改ざん』『なりすまし』『盗用』が代表的な事例として挙げられます。
それぞれ具体的な事例を説明していきます。
捏造
捏造とは、実際には存在していないデータを作成して実在しているかのように提示することです。
具体的には実在しない公文書を自ら作成し、それを元にして自分の仮説が正しいと論文で主張することなどを指します。
改ざん
改ざんとは、自分の主張や研究結果の正当性を主張するため実際に存在するデータや調査結果を都合の良いように改変することです。
具体的には、統計データの数値を自分の主張を正当化するため実際に得られた数値とは異なる数値に変更して学術発表の際に利用することなどを指します。
なりすまし
なりすましは、他者に論文の一部や全部を書いてもらったにも関わらず自分だけが書いた論文として発表することです。これは、論文だけに関わらず調査や分析においても他者がやって自分だけがやったとして発表することでもなりすましにあたります。
具体的には、必要なインタビュー調査などを自分ではない他者に行わせたのにも関わらずあたかも自分だけがやったとして論文に掲載することなどを指します。
盗用
盗用は、他者のアイデアや表現、判断などを盗んで自分のものとして発表してしまうことです。
盗用は、他人が行ったオリジナルの学術研究の価値を侵害するものであり学術世界では犯罪として認知されています。
具体的には、他者の研究論文の文章をそっくりそのまま借用したのにも関わらず引用符もしくは注釈を設けなかったことを指しています。
研究助成金の不正な使用
研究助成金は、そのほとんどが用途について規定が設けられておりこの規定に従わない使用は不正使用です。
研究助成金の規定に従わないで論文を作成した場合、不正な手段を用いて論文を作成したと見なされてしまいます。
研究倫理を遵守するための3ヶ条
研究倫理を逸脱しないために心がけるべき3ヶ条を解説していきます。
研究倫理違反は発覚する
少しくらいは大丈夫という考えは捨ててください。人権侵害や捏造などは必ず発覚すると考えましょう。
研究倫理違反は学術研究者としての人生を狂わせる
不正な手段を用いた学会発表や論文作成は、学術研究者としての人生を大きく狂わしかねません。必ず社会に向けて公表されますし、今の地位を失ってしまう可能性が高いです。
知らなかったは悪
研究倫理を理解して遵守することは学術研究者としての義務です。知らなかったは通用しません。
まとめ
学術研究者として活動していくためには、研究倫理を理解することは重要です。しっかりと理解してルールに沿った学術研究を進めていきましょう。